建退共と退職金制度で経審30点|生命保険は加点になる?

経営事項審査(経審)のW点(社会性等)には、「建退共への加入」15点と「退職一時金制度・企業年金制度の導入」15点という二つの項目があります。生命保険で退職金の原資を準備していても、保険そのものは加点の要件ではありません。加点の根拠になるのは、中退共などとの契約や、就業規則などに定めた退職金の規定です。

この記事のポイント

  • 建退共(建設業退職金共済)への加入で15点。ただし、正当な理由なく共済証紙の購入実績がないなど、適切に運用されていない場合は対象外です。
  • 退職一時金制度・企業年金制度で15点。中退共・特定退職金共済・就業規則などの退職金規定・確定給付企業年金・企業型DCなどが対象です。
  • 養老保険などで退職金の原資を準備しても、保険の加入自体は加点要件ではありません。
  • 令和8年7月の改正後も、この二つの項目の配点は変わっていません。
  • 社長・役員の退職金は、従業員の退職金制度とは別に考えます。

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目次

経審のW点と退職金の2項目

経審は、公共工事の入札に参加する建設会社が受ける審査です。その中のW点は、会社の社会性や働く人への配慮などを評価する部分です。

国土交通省の資料によると、令和8年7月1日以降の申請に適用される改正で、W点の一部が見直されました。社会保険未加入の減点項目は削除され、CCUSの就業履歴の加点は減り、「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」が新設されています。一方、建退共と退職一時金・企業年金の項目は、改正前と同じくそれぞれ15点です。

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項目配点令和8年7月改正
建設業退職金共済制度(建退共)への加入15点/0点変更なし
退職一時金制度・企業年金制度の導入15点/0点変更なし
法定外労働災害補償制度への加入15点/0点変更なし

建退共と退職一時金・企業年金は、別々の項目として評価されます。両方の要件を満たせば合わせて30点となり、W点の中では比較的取り組みやすい項目といえます。経審での最終的な扱いは、提携する建設業専門の行政書士が確認します。

表の3行目の法定外労働災害補償制度も、保険や共済に関わる15点の項目です。こちらは、業務災害と通勤災害の両方を補償すること、下請負人の職員も対象にすること、障害等級1級から7級を補償することなどが要件とされています。退職金の2項目と合わせて、保険・共済に関わる項目は計45点分あることになります。

なお、改正でW点の最低点は▲210点から▲90点に変わりました。社会保険の減点がなくなった分、加点項目をどれだけ積み上げられるかの比重が相対的に高まったといえます。

建退共で15点を取る要件

建退共とは

建退共は、建設現場で働く人のための退職金制度です。独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しています。現場を移ったり、勤める会社が変わったりしても、働いた日数分の掛金が通算される仕組みが特徴です。

掛金の納め方には、共済証紙を購入して手帳に貼る「証紙貼付方式」と、電子的に納める「電子申請方式」があります。国土交通省は、CCUS(建設キャリアアップシステム)の就業履歴を使った電子申請方式の活用を呼びかけています。

加点の要件

国土交通省の通知「経営事項審査の事務取扱いについて」(令和8年改正)では、審査基準日に勤労者退職金共済機構と特定業種退職金共済契約を結んでいることが要件とされています。下請から委託を受けて事務を行う場合も含まれます。

ただし、正当な理由なく共済証紙の購入実績がないなど、制度が適切に運用されていない場合は加点の対象外です。「契約だけして掛金を納めていない」状態では加点されない、と考えておくのが安全です。

見積りで掛金を確保する流れ

国土交通省の「通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのある取引事例集」(令和8年1月)では、法定福利費の事業主負担分や安全衛生経費とともに、建退共の掛金も通常必要な額を確保すべき費用として挙げられています。

建退共の掛金は、見積りの段階で原価として計上し、取引先と協議する対象になります。掛金を自社の持ち出しにしない工夫は、制度を続けるうえでも大切です。

退職一時金制度・企業年金制度で15点を取る要件

同じ通知では、次のいずれかに当てはまる場合に加点の対象になるとされています。

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制度しくみ(概要)加点の根拠
中小企業退職金共済(中退共)勤労者退職金共済機構と契約し、掛金を納める機構との契約
特定退職金共済(特退共)商工会議所などの特定退職金共済団体と契約する団体との契約
就業規則・労働協約の退職金規定就業規則などに退職金の支給を定める就業規則などの規定
確定給付企業年金将来の給付額をあらかじめ決める企業年金年金制度の導入
企業型確定拠出年金(企業型DC)会社が掛金を出し、従業員が運用する年金制度の導入

就業規則で退職金を定める場合は、労働基準法89条で定められた「退職手当」に関する事項として記載します。どのような規定で加点が認められるかの細かい確認は、提携行政書士が行います。就業規則の作成や変更、労働基準監督署への届出は社労士の業務となるため、必要な場合は社労士をご紹介します。

生命保険は加点になる?

保険に入っただけでは加点の根拠にならない

中小企業では、従業員の退職金の原資を、会社が契約する養老保険などで積み立てる方法がとられることがあります。この方法自体は、退職金を準備する手段の一つです。

しかし、経審の退職一時金制度の加点要件に、生命保険の加入は挙げられていません。加点の根拠になるのは、あくまで就業規則などの退職金規定や、中退共などとの契約です。

言い換えると、次のように整理できます。

  • 就業規則に退職金規定があり、その支払原資を保険で準備している:就業規則の規定が加点の根拠になる
  • 保険に入っているが、退職金の規定がない:保険があっても、そのことだけでは加点の根拠にならない

保険で準備するときの注意点

就業規則で退職金を定めると、会社には規定どおりに支払う責任が生じます。保険はその支払いに備える「財布」の一つにすぎません。保険の解約返戻金が退職金の額に足りない時期もあるため、規定の金額と保険の積立の状況を合わせて確認することが大切です。

また、保険料の経理処理によっては、決算書の利益や資産の構成が変わります。経審のY点(経営状況)などへの影響が考えられますが、影響の大きさは会社ごとに異なります。決算期と保険料の払込時期は、税理士・提携行政書士とすり合わせたうえで決めることをおすすめします。

社長・役員の退職金は別に考える

ここまでの建退共や退職一時金制度は、主に従業員のための制度です。社長や役員の退職金は、これとは別に準備を考える必要があります。

小規模企業共済

小規模企業共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、経営者のための退職金制度です。建設業では、常時使用する従業員が20人以下の会社の役員や個人事業主が加入できます。会社の役員として登記され、事業に従事していることが必要です。

中小機構の案内では、掛金は月1,000円から7万円までの範囲で500円単位で選べ、掛金が全額所得控除できるなどの税制上のメリットがあるとされています。ご自身の税額への影響は、税理士にご確認ください。

生命保険による準備

社長の退職金や、万一のときの死亡退職金の原資を、会社が契約する生命保険で準備する方法もあります。社長が現場に出る建設会社では、退職金の準備と、急な死亡への備えを一緒に考えることが多くなります。

役員退職金の金額の決め方や税務上の扱い、保険料の経理処理は、会社の状況によって異なります。個別の判断は税理士にご相談ください。当相談室では、保険を使った資金準備の設計をお手伝いします。

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対象主な準備の方法経審との関係
現場の技能者建退共建退共の項目(15点)の対象になり得る
従業員全般中退共・特退共・就業規則の退職金規定・企業年金退職一時金・企業年金の項目(15点)の対象になり得る
社長・役員小規模企業共済・生命保険などW点の退職金2項目とは別の話

取り組みの順番

  1. 今ある退職金の仕組み(建退共・中退共・就業規則の規定・保険)を書き出す
  2. 建退共は、掛金の納付が実際に行われているかを確認する
  3. 退職一時金制度は、就業規則などに規定があるかを確認する
  4. 保険で原資を準備している場合は、規定の金額と積立の状況を照らし合わせる
  5. 社長・役員の退職金は、従業員とは別に準備の方法を検討する

経審の点数の確認は提携行政書士、就業規則や届出は社労士、税務は税理士、保険による資金準備は当相談室、という分担で進めると整理しやすくなります。

よくある質問

Q. 建退共に加入していれば必ず15点になりますか?

国交省の通知では、正当な理由なく共済証紙の購入実績がないなど、制度が適切に運用されていない場合は加点の対象外とされています。加入しているだけで必ず加点されるとは限りません。経審での扱いは許可行政庁や提携行政書士にご確認ください。

Q. 養老保険で退職金を積み立てていれば加点されますか?

経審の退職一時金制度の加点要件に、生命保険の加入は挙げられていません。加点の根拠になるのは、就業規則などの退職金規定や中退共などとの契約です。保険は、規定に基づく退職金の支払いに備える手段の一つです。

Q. 社長も建退共や中退共に入れますか?

建退共や中退共は、主に従業員のための制度です。社長・役員の退職金は、小規模企業共済や生命保険などで別に準備する方法が一般的です。加入の可否は各制度の運営団体にご確認ください。

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出典

記事は2026年11月時点の情報です。担当:保険募集人 櫻井高貴(行政書士・一級FP技能士)。運営者

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